
ボルト締結作業に従事する作業員は一見地味に見えるこの作業の中で実はさまざまなリスクと隣り合わせです。
まず、物理的な負担が大きなリスクの一つです。ボルト締結は手や腕に継続的な力を加える作業であり、特に大型ボルトの場合はトルクレンチやインパクトレンチなどの重量物を扱うため、肩や腰、手首への負担が蓄積します。無理な姿勢での作業や、長時間にわたる締結作業では、腱鞘炎や腰痛などの慢性的な障害を引き起こす可能性も高くなります。
また、工具による事故も大きなリスクです。インパクトレンチや油圧トルクレンチなどの動力工具を使用する際には誤操作や機器の不具合によって、指を挟んだり、飛び出したボルトにぶつかったりするなどのケガが発生することがあります。特に反力を伴う工具では十分な反力受けがないと工具が跳ねたり、作業者に大きな衝撃を与えることもあります。
さらに締結ミスによる責任の重さも精神的リスクとなります。ボルトが適切なトルクで締め付けられていなければ、構造物や機械の安全性に重大な影響を及ぼします。過剰トルクで部材が破損することもあれば、トルク不足でボルトが緩み、大きな事故につながることもあります。このため、作業員は常にプレッシャーの中で高精度な作業を求められることになります。
加えて、現場環境も作業員にとって大きな負担です。高所、狭所、暗所、騒音が激しい工場や建設現場など、作業環境が厳しい中でのボルト締結作業は、転倒・落下・熱中症など、作業そのもの以外のリスクも存在します。
このように、ボルト締結作業は肉体的・精神的に過酷であり、作業員は常に安全への配慮と高い集中力を要求される、責任の重い仕事です。適切な工具の使用、正確な手順の徹底、そして作業者自身の体調管理や教育が不可欠です。
ボルト締結作業時のリスクを回避するヒントは以下記事で解説しています。
ボルト締結作業時の危険予知活動について